~SPの彼に守られて~
「鷹野さん!手を離してください!」
「千明は黙っていろ。レオは何処だと聞いているんだ!」
「お前みたいなSPに、"あの人"が相手をする訳がない。それに言った所で組織のアジトは無数にあるから、"あの人"に会える確率は宝くじ1等を当てるよりも難しいさ」

 龍崎さんがうすら笑いを浮かべる姿は誰もが憧れている龍崎さんではなくなっていて、本当の龍崎さんは私を危ない目に合わせるくらいの酷い人だったんだと思うと幻滅する。

 すると地下駐車場の入口からサイレンの音が聞こえてきて、段々とその音が大きくなると続々とパトカーが赤いライトを照らしながら私たちの側に停まり、中からスーツ姿の男性たちが降りる光景は2時間ドラマでも見たことがあって、1人の男性が鷹野さんの元に来て警察手帳を掲げた。

「南山と申します。上層部の命令で、その男をこちらで預かります」
「まだ待ってくれ。レオの居場所を聞き出さなくちゃいけねーんだ」
「それは我々警察の仕事です。こちらに引き渡してもらいます」
「………分かりました」
「自分で歩くから、離してもらおうか」

 南山さんは頑として譲らない姿勢でいて、鷹野さんは渋々という形で龍崎さんを南山さんへ渡そうとすると、龍崎さんは自分から南山さんの元へ歩いていった。

 2人がパトカーへ乗り込むとパトカーが走り出し、鷹野さんは悔しそうに下唇をギュッと噛みながら走り去るパトカーを見つめている。

「……っ!」
「鷹野さん!」

 鷹野さんは右手で左腕を押さえながら膝から崩れて蹲ると、抑えている場所から赤い液体が沢山流れ出しちゃっていて、私はしゃがんで両手で赤い液体が流れ出る場所を必死に抑えた。

 これ以上流れ出してしまったら鷹野さんが危ないし、お願いだから止まって!と赤く染まる両手に力を込める。
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