ふりむいてよキャプテン
一球一球お願いします!と声を張り上げ、フェンスぎりぎり時にはフェンス外に打たれるボールに、にっしーは苦しみTとズボンを泥だらけにしながら飛びつく。


イレギュラーして、打球がにっしーの体に当たっても、高田先生はお構い無しに次から次へとノックを打つ。


胸が、痛くて、苦しかった。

先生に怒られたのも、ノックを受けているのも私じゃない。ボールが当たったわけでもない。

苦しいのはにっしーの方なのに、そんなにっしーを見ているだけで、胸が痛くて張り裂けそうだった。


もちろんにっしーの考えていること全てが分かるわけじゃない。

それでも、にっしーがどんな気持ちで自ら百本ノックを志願したのか。どんな気持ちで、今ノックを受けているのか。

背中に苦しみの文字を背負い、必死にボールに食らいついて何度も立ち上がるにっしーを見ていると、なんとなく彼の気持ちが分かるような気がして......。


痛いよ。ただ先生にボールを渡しているだけなのに、痛くて痛くてたまらない。
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