ふりむいてよキャプテン
「......おつかれさま、にっしー」


ヒロくんが集めてくれたかごいっぱいのボールを台車にのせてから、しゃがみこんでいるにっしーに声をかける。


「......うん。俺、最低だ。
試合中に他のこと考えてた」

「そんなこと、ないよ」


うなだれたままのにっしーに、首を横に振る。

確かに今日のにっしーはひどかったかもしれない。
だけど一番最低なのは、にっしーにそうさせてしまったのは、私だ。


「体動かしてたらちょっとはすっきりするかと思ったけど......」

「......少しはすっきりした?」

「どうかな......」


しゃがみこんだまま、にっしーは顔をあげて、日が沈んで暗くなりはじめた空を見上げる。


私も、百本ノック受けたいくらいモヤモヤするよ......。

痛くて、苦しくて、にっしーを苦しめることしかできなくて。

もう、どうすればいいのか分からない。


「......ごめんね、私のせいだね」

「違うよ、あみのせいじゃない。
自分自身の責任だ」


かがみこんで、にっしーの顔をのぞくけど、少しもにっしーとは目が合わない。そんなにっしーを見るのが辛くて、悲しくて。


「......私、もうにっしーと関わらない」


泣きそうな顔で、震える声で発した言葉。


背を向けて去っていく私を追うどころか、にっしーは何一つ言葉を発することもなかった。


きっと、こうするしかないんだ。
もっと早くこうすれば良かったんだよ......。

最善のことをしたはずなのに、薄暗い空以上に、私の心はまるで電気を消して少しの明かりもなくなったかのように、真っ暗だった。
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