ふりむいてよキャプテン
五回裏、この回の攻撃は一番バッターのにっしーから。


「西川、俺はもう何も言わない。
お前の思うようにやれ。
お前の、野球をやってこい」


もしかしたら、高校生活で最後の打席に入るかもしれないにっしーがヘルメットを手に取ると、先生がそう声をかけた。

はい、と返事をしてから、ヘルメットをかぶる前ににっしーはベンチを振り返る。


「俺絶対マサまで回すから。
打ってくれよ」


一人でも出れば、四番の小野くんまで回る。
チャンスクラッシャーだった一年生時代がありながらも、さりげに四番なんて打っちゃってる小野くん。

その小野くんは、にっしーから託された期待に、何の戸惑いもなく力強くうなずいた。


それを見て、ヘルメットをかぶり素振りをしてから、にっしーは左の打席に入っていく。


左打席に立つ背番号4をつけたにっしー。
三年間で何回この姿を見たかな......。


それを見ているだけで、なんだか胸が熱くなって、思わず目を伏せる。







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