この恋、きみ色に染めたなら





美術室に来い、ってどんな言い方なのよ…!?




そもそも…“モデルは無理”って、そう言ってたのに…






それに……









『紗希さ、もしかして先輩のこと好きになっちゃった?』





凪の突然の問いかけに、驚いた顔をしながら凪を見つめる。









『………な、なんで……?』







『朝、何か言いかけていたし…。
 朝なんて二回も先輩はこのクラスに顔を出してるんだよ?

 なんかあったのかな、とは思うよ』






本当に凪はなんでもお見通し。


凪はいつもどんな些細なことでも、私の変化に気付いてくれる。




凪が心配してくれてること、本当に嬉しい。








でも、


先輩を好きになってしまいました、


先輩には忘れられない人がいました、


恋をしたと思ったら、あっという間に失恋決定です、



その事実が苦しすぎるのに、言葉にしたらもっと現実味を帯びてしまう気がして…









『凪、心配してくれてありがとう。
 聞こうと思ってくれてありがとう。

 でも…ごめん。
 今は……色々なことが突然来て、言葉にして伝えられない…。

 でも、いつか凪に聞いてもらいたいから…その時まで待っててくれる…?』







私の言葉に、凪はニコッと微笑んだ。








『無理強いはしたくない、紗希が言えるようになるまで待ってる。

 だから、いつかは教えてね?』




今度は、凪の言葉に私が微笑む。





いつか、いつか、ちゃんと話すよ、凪。














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