この恋、きみ色に染めたなら
私の言葉に呆気にとられている凪。
『……え、うん。
紗希さん、紗希の気持ちくらいはお見通しでしたけど?』
薄く笑う凪に私は一瞬なんで気付かれてるんだろう、なんて思ったけど。
私の行動や言葉に気付く何かがあったのかな…なんて考えられる節もあったり…
『それで、成田先輩の方はどうなのよ!?』
凪は身を乗り出して、私に問いかけてくる。
“どうなの”って聞かれても、いい報告は一つもないな…
『うん、先輩には好きな人がいて』
『え!あの氷の美男子に!?てか同い年?後輩?てか付き合ってるの!?』
またもや遮られた言葉に私は軽くため息を吐いて、そして凪を見つめる。
『もう亡くなってる、先輩の幼馴染さん…』
そう呟くように凪に話しかけると、凪は大きく開いた口を隠すかのように、両手で口元を覆った。
『……え……幼馴染…?てか…亡くなってるって?』
私が吐いた、先輩の真実に驚いたのだろう。
いつもより慌てた様子の凪に、私は言葉を続ける。
『高校一年の夏休み直前に事故で亡くなられたんだけど…。
その人のことが先輩は忘れられてなくて…それで告白とかされても受けてなかったっていうか……』
『そんで、紗希はどう言われたの?』
直球すぎる、と、思ったものの。
私は凪の直球のボールを受け止め、凪に向かって返す。
『ダメだった……。
けど、その人の代わりでいいから……先輩の傍にいさせてほしいってお願いして……』
『そんで?』
『今日、ケーキをご馳走してもらう…』