この恋、きみ色に染めたなら







『……あ……私は今から帰るとこ』






『ちゃんと祝ってやれよ』






あっさり私の言葉を遮り、そう先輩は私に言う。











『それとも俺もお祝いしてやろうか?

 それとも俺は帰ったほうがいいか?』







先輩のあまりに抑揚のない声に私は息を呑む。





こんなに怖い顔をした先輩も、こんなにも怖い先輩の声は……




過去最大級で、そしてその恐ろしさに私は体が震えだす。















『……せ……先輩が帰るなら私も帰ります……』







『なんで?』








『……先輩のことが』







『好きとか言うな』








一瞬、自分の耳を疑った。




“好きとか言うな”……そう、言ったよね………今。











『俺のことが好きなら、俺の傍にいろって言ったよな?

 なら、なんでこいつとわざわざ二人で会うの?』






冷たく、そう問いかける先輩に私の心は凍っていくようで。


先輩がまとっている空気が重くて、私の鼓動は速まるー…












『……それは………』




『もういい。お前の話は聞きたくない』






先輩はそれだけ言うと、踵を返して、お店を出ようとする。





すぐにでもそんな先輩の腕を掴んで引きとめたかったけど、私の足は全く動かない……





全身に力が入らない………












私はただ、先輩がお店を出ていく姿を見つめているだけしかできなくて……















そして、先輩が出た後に、お店の扉が閉まったー……











< 271 / 324 >

この作品をシェア

pagetop