この恋、きみ色に染めたなら
『……あ……私は今から帰るとこ』
『ちゃんと祝ってやれよ』
あっさり私の言葉を遮り、そう先輩は私に言う。
『それとも俺もお祝いしてやろうか?
それとも俺は帰ったほうがいいか?』
先輩のあまりに抑揚のない声に私は息を呑む。
こんなに怖い顔をした先輩も、こんなにも怖い先輩の声は……
過去最大級で、そしてその恐ろしさに私は体が震えだす。
『……せ……先輩が帰るなら私も帰ります……』
『なんで?』
『……先輩のことが』
『好きとか言うな』
一瞬、自分の耳を疑った。
“好きとか言うな”……そう、言ったよね………今。
『俺のことが好きなら、俺の傍にいろって言ったよな?
なら、なんでこいつとわざわざ二人で会うの?』
冷たく、そう問いかける先輩に私の心は凍っていくようで。
先輩がまとっている空気が重くて、私の鼓動は速まるー…
『……それは………』
『もういい。お前の話は聞きたくない』
先輩はそれだけ言うと、踵を返して、お店を出ようとする。
すぐにでもそんな先輩の腕を掴んで引きとめたかったけど、私の足は全く動かない……
全身に力が入らない………
私はただ、先輩がお店を出ていく姿を見つめているだけしかできなくて……
そして、先輩が出た後に、お店の扉が閉まったー……