晴天のへきれき?
 先輩は眉間にシワを寄せ、それから歌っている高瀬さんを見る。

「よし。木村」

「はい」

「トイレに呼び出しだ。ついておいで」

 腕を取られて立ち上がると、それに気がついた高瀬さんがマイクを使って声を上げた。

「これからサビなのに、どこ行くんだ?」

「トイレ~」

「女は多いよな。ツレショ……」

「化粧直しとお言い!」

 バシリとおしぼりが飛んで、先輩に腕を引かれるままに部屋を出た。


 店内のBGMに靴音も掻き消される廊下。

 たまに酔っ払いらしいお姉さんとすれ違う。

 そんな中を少し歩いて、トイレの手前で立ち止まった。


「んで。高瀬が解らんとはどういう事?」

「どういう……と言いますか」

「私は奴を殴ればいい? それとも蹴ればいい?」

 先輩……何も暴力に訴えなくても。

「先輩。女性としてその発言は如何でしょう?」

「そんなんは言われなくても解ってる」
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