鬼伐桃史譚 英桃

 梅姚を連れ戻す。


 そこで桜華はすべてを思い出したのだった。

 ――そうだ。梅姚は自分を鬼から逃がすために自ら紅蓮の炎の中に身を投じ、鬼に臆することなく立ち向かった。


 自分を助けるために姉上が囚われてしまった。


 桜華は思い出した事実に心臓が縮まる思いがした。力いっぱい唇を噛みしめ、拳を握る。


「では、某(それがし)はこれにて」

「ふむ、吉報を待っておるぞ」

「御意にございまする」

 桜華の意識下で元近と梧桐の言葉が交わされる。


 梧桐が座敷から去った後、元近は深いため息をついた。

「梧桐殿が動いてくださる。これでひと安心じゃ」


「ええ、本当に」

 元近の隣に座しているかぐやもまた、ほっとひと息ついた。


「あとは……桜華が目覚めれば、すべてうまくいく」



 元近は隣で眠っているだろう愛娘を一目見ようと重い腰をあげた。


 いまだ桜華が眠っているだろうその襖をそろりと開ける。


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