大海原を抱きしめて
プロローグ


今年も、春がやってきた。

みんな平等に与えられた、一秒、一日、一週間を過ごし、気づけばまた春がきたんだなぁ。

覚醒し始めた意識の中で、漠然とそんなことを考えた。

遮光性のカーテンは、まるで現実世界への扉のよう。

働かない頭が作り出す、そんな錯覚を煩わしく思う。

今日も仕事だ。少しだけ体が重い。

亀のようにゆっくりと、ベッドサイドのカーテンを開けると、太陽が私を照らした。

目を覚ませ。そう言わんばかりに。

軽く体を伸ばして、どの場所よりも落ち着く場所であるベッドから出た。

今日も一日が始まる。

いつもと何ら変わらない、一日が。
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