大海原を抱きしめて
プロローグ
今年も、春がやってきた。
みんな平等に与えられた、一秒、一日、一週間を過ごし、気づけばまた春がきたんだなぁ。
覚醒し始めた意識の中で、漠然とそんなことを考えた。
遮光性のカーテンは、まるで現実世界への扉のよう。
働かない頭が作り出す、そんな錯覚を煩わしく思う。
今日も仕事だ。少しだけ体が重い。
亀のようにゆっくりと、ベッドサイドのカーテンを開けると、太陽が私を照らした。
目を覚ませ。そう言わんばかりに。
軽く体を伸ばして、どの場所よりも落ち着く場所であるベッドから出た。
今日も一日が始まる。
いつもと何ら変わらない、一日が。
< 1 / 435 >