大海原を抱きしめて
5.心の奥の痛い場所


5.心の奥の痛い場所


新体制で臨む事業は、スタッフの努力と才能が開花するように軌道に乗り始めたらしい。

基本的に宿泊を含まない日帰りコース。

村全体を案内したり、海鮮中心の食事でおもてなししたり、希望があれば漁師体験をさせたりする。

一般のお客さんというより、大手のツアー会社が組んだ旅行の一貫として、団体のお客さんを接待するケースがほとんどみたいだけど。

申し込みは予想以上に多く、本番はまだ片手で数えられるほどだが、何事もなく終了している。

でも、たまに受ける先方からの電話を、結局内線で谷上さんたちがいる事務所に回すたびに、もどかしい気持ちになる。

私も、携わりたい。

そんな余裕があるほど、自分の仕事を上手にこなせているかと問われれば、なにも言えないけど。

でも、観光ガイドとかツアープランニングには興味があった。

ここで仕事をしはじめてから、特に。

たまに観光客と話をすることはあるけれど、やっぱり現地での仕事はやりがいが違うような気がしてる。

だから、事業に関われないことを正直残念に思ってる。

誰にも言ったことないけど。
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