大海原を抱きしめて



「笠岡さんは笠岡さんです。この村に来てからの笠岡さんしか信じない。私だけじゃなく、みんな。これから何が起こっても見捨てたりしない」


夕日に照らされる背中を、子供をあやすように優しくさすった。

人の温もりを感じてほしくて。

私を立ち直らせたのだって、温もりだった。

生きている限り、いつからだって始められる。やり直せる。

何よりも、一人じゃないと思わせてくれたから。

笠岡さんも、触れられて安心してくれたらいい。

そして、私に打ち明けてよかったと思ってくれたら。



涙が落ち着いて、私を事務所まで送り届けてくれた笠岡さんは、どこか照れくさそうに帰っていった。

ハナちゃんの元へ。しっかりと、前だけを見て。
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