大海原を抱きしめて


「ハナ、こないだのおねえちゃん来たぞー?覚えてるか?」


かち合った視線に、胸がきゅんと音をたてる。

ぱたぱた駆け寄ってきたハナちゃんは、私を見上げて、しっぽをふってる。


「覚えてる?私のこと」


しゃがんで触れてあげると、気持ち良さそう。

やっぱりかわいい。ふわふわ。


「悪いな。わざわざ」


悪びれずに言われても、なんにも響きません。


「谷上さんに頼まれたので」

「冷てぇなー。谷上さんは、香乃ちゃんが率先して"笠岡さんのためならいくらでも送迎します"って言ってたって教えてくれたけど」

「違います。谷上さんが飲み代おごってくれるって言ったんで、了承したんです」

「俺より金か」

「まあ、解釈はご自由にどうぞ」
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