大海原を抱きしめて
ハナちゃんと離れるのが名残惜しそうな笠岡さんを連れて向かうのは、いつもの店。
店の前で笠岡さんを先に降ろして、隣の駐車場に車を停めている自分が、かわいそうになった。
一台も車が停まっていない駐車場に、私の車だけがポツリ。
そりゃそうだ。
飲み会に車で来る人なんていない。
店に入ると、谷上さんはすでにみんなの中心で出来上がっていた。
煙草の煙に溢れている店内は貸し切りらしく、子供たちの声が響いている。
未穂ちゃんの隣に座って、ジョッキに入ったビールを受けとる笠岡さんは、嬉しそうにしてる。
私には、そんな表情見せたことないくせに。
気を遣ってくれたのだろう加藤さんと目が合って、こっちおいでよ、と合図されたけれど微笑んで首を横に振った。
座ったのは反対側。