大海原を抱きしめて
バラエティー番組を見ながら、チョコレートのお菓子を食べた。
誰のためでもない、自分のために。
答えがもう出ていることを、悩む必要なんてない。
そんなことが原因で食事もできなくなるなんて、バカみたいだから。
「ただいまー」
玄関の扉ががらりと開いたと思ったら、翔が帰ってきた。
お母さんが"部活は?"と問うと、先生が出張だから部活は休みだと教えてくれた。
「それより、ねーちゃんにおみやげ持ってきた!」
翔が私におみやげなんて、珍しすぎて気持ち悪い。
まともなものだろうかと怪しんだ視線を送っていたら、翔の薄っぺらいリュックの中から出てきたのは、見覚えのある紙袋。
はい、と手渡されて受けとると、甘い匂いがした。
「よかったら食べてよ」
袋を開けると、そこには私が好きなシュガートーストという名前のパン。
私も通った高校の近くにあるパンやさんの、人気のパン。
ふんわりしたパンの上に、バターとたっぷりの砂糖が乗せられて、軽く色がつくまで焼かれたもの。
「ねーちゃんそれ好きでしょ?ちなみに俺は、ピザトースト」
今食べたら夕ごはん食べれなくなるわよーと言われつつも、早速かじりつこうとしてる翔。
手くらい洗ってきなさい、って怒られてるのがなんだか笑える。
少し焦げた、香ばしい匂いの砂糖を見つめて、ありがとう、と翔に言った。