大海原を抱きしめて


そうこうしているうちにお父さんも帰ってきた。

外の流し台で調理した魚をボウルにいれて持ってきて、笑顔で私に見せつけてくる。


「今日は塩焼きだ」


漁師の家に生まれて、小さい頃から魚は大好きだった。

焼いた魚ももちろん大好き。

不器用にも、お父さんなりの気遣いなんだと思う。

涙が出そうだった。

こんなに気苦労の多い私でも、こんなに心配してくれる。

そばにいてくれる。

お菓子もシュガートーストも魚も、嬉しい。

与えられる愛を、私も返せるようになりたい。

ありがとうって言える、素敵な人になりたい。

でも今は、もうちょっと甘えていてもいいかな。

また心から笑えるようになるまで。

少しだけ残してしまったけれど久しぶりにしっかりと食事をして、心からのごちそうさまを言った夕食は、とても幸せに溢れていた。

大丈夫。

私はきっと、前に進める。
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