大海原を抱きしめて


仕事じゃなかったとしても、頷かないけど。

バレバレの逃げの姿勢に、笠岡さんは気づいているんだろうけど。


「じゃあ未穂ちゃんでも誘うか」

「未穂ちゃん彼氏いますからね、手は出さな…」

「未成年に手ぇ出すほど暇じゃねーんだよ。それにこんなおっさん、未穂ちゃんが相手すると思うか?」

「ま、確かに」


納得した私を、笠岡さんは軽く睨むけど。

だって事実じゃん。


「少しは気ぃ遣え、このチビ」


不思議なことに、バカにされているはずなのに傷つく感覚がない。

むしろ感じるのは、優しさのようなあたたかみ。

それが、大人なの?

私よりずっとずっと先で生きてるから、この人のペースについていけないの?

静かに見上げれば、相変わらず私を見下すような視線。
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