大海原を抱きしめて
「でも、どうして私なんですか」
「一番真面目そうだし、知識も持ってそうだから」
ま、仕事なら仕方ねーか。
諦めた横顔に、社交辞令で申し訳ないです、と口にしたけどバレバレだったよう。
「何、その感情こもってねぇ謝罪」
「うっわー、今日初めて会ったおじさんに心読まれたー」
「ムカつくわ、この茶髪の小学生」
私の言葉に反応しながらも前に歩き出した笠岡さんは、やっぱり余裕を醸し出していて。
でもそれが気にくわなかったから、広い背中に無数についている、横になってくつろいだ証拠である絨毯のホコリは、見ないふりをしてやった。