大海原を抱きしめて


「でも、早くみんなに言いたい。言って、香乃は俺のものだって知らしめたい。お前に寄ってくる男たちに」

「そんな需要ないですよ、私」

「ほら、そういうとこが危ねぇんだって。もっと自分のかわいさ自覚しろ」

「かわいくなんて」


頬を笠岡さんの両手で挟まれて、そのまま唇をぎゅーっと押し付けられて、ぎゅーっと苦しいくらい抱きしめられた。


「惚れた欲目でいってんじゃねーぞ?優しく近寄ってくる男には気を付けろ」

「は、はい…」


腑に落ちないけど。

気をつけるって、どうすればいいかわからないけど。


「俺、結構嫉妬深いらしいから。覚悟しといて」

「らしい、って?」

「お前と出会ってから気づかされたんだよ。嫉妬なんて馬鹿馬鹿しいと思ってたはずなのに。知らない感情がいろいろ湧いてきて困ってる。だから――」
< 413 / 435 >

この作品をシェア

pagetop