大海原を抱きしめて
「でも、早くみんなに言いたい。言って、香乃は俺のものだって知らしめたい。お前に寄ってくる男たちに」
「そんな需要ないですよ、私」
「ほら、そういうとこが危ねぇんだって。もっと自分のかわいさ自覚しろ」
「かわいくなんて」
頬を笠岡さんの両手で挟まれて、そのまま唇をぎゅーっと押し付けられて、ぎゅーっと苦しいくらい抱きしめられた。
「惚れた欲目でいってんじゃねーぞ?優しく近寄ってくる男には気を付けろ」
「は、はい…」
腑に落ちないけど。
気をつけるって、どうすればいいかわからないけど。
「俺、結構嫉妬深いらしいから。覚悟しといて」
「らしい、って?」
「お前と出会ってから気づかされたんだよ。嫉妬なんて馬鹿馬鹿しいと思ってたはずなのに。知らない感情がいろいろ湧いてきて困ってる。だから――」