大海原を抱きしめて
今度は優しく押し付けられた唇。
離れると笠岡さんの腕は私を抱き寄せて、耳元で静かに呟かれた。
"一緒にいろんなことを感じて、抱えて、共有していこう"
声を出したら泣きそうで、必死に頷いて答えることしかできないけど。
でも、笠岡さんはいつだって、こうして私の心に寄り添ってくれる存在になるんだと思うと、とても心が温かい。
どんな過去も、不安な未来も、笠岡さんになら恥も戸惑いもなく語れる気がする。
いつでも私を見守って、受け止めてくれた、この街から望む大海原のように。
晴れの日も雨の日も、凪いだ日も時化の日も、私は海が大好き。
そんな風に、笠岡さんを想っていたい。
これから先も、この小さな村で。
ゆっくり流れる時間の中で、静かに移り変わる四季を感じながら。
まだ笠岡さんの背中に手を回すこともできない私だけど、いつか私から抱きしめられる日を夢見て――