大海原を抱きしめて


「通してください」

「やだ」


睨んで見上げてみたけど、効果なし。


「私のこと、嫌いなんですか」


私のつたない頭では、そんな理由しか思い付かない。

だから、邪魔するんでしょ?


「そんなこと、俺がいつ言った?」

「だって、こんなことして私に何を求めてるのかわからない」

「むしろお前の方が、俺のこと嫌ってんじゃん」


それは否定できないけど。

そんなことないです、って言うのは嘘になるから、だんまりをきめこむ。

上から降ってくるのはため息。

笠岡さんは私の態度も、気にくわないみたい。


「お前が俺に心開いてくれるまで動かない」

「今すぐは無理です」

「なんでだよ」

「笠岡さん、得体の知れない人だから」

「お前だってそうじゃん」

「私は普通の23才ですけど」


もう疲れた。
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