櫻の王子と雪の騎士 Ⅱ







 その時







 光の粒の中に



 輝く一匹の蝶々



 全身が光で出来ているのではないかと思えるほど眩い蝶が必死に羽をはばたかせる。



 気づけばその蝶はシェイラの周りにたくさん、数え切れないほどに姿を現す。



 小さな羽を上下させ、その蝶たちはシェイラの元へと飛び続けた。



 その姿が、ルミアの生み出す雪の蝶『六花蝶』にあまりに似通っていて、



 シェイラは、夢見心地でそれを見つめる。



 迎えに来てくれたのかと、



 死してなお、愚かな自分の道しるべとなってくれるのかと



 



 だが、そうではなかった







 それは死へ道標ではなかったのだ



 



 蝶たちはシェイラの手の中に集まる。



 小さな光は、腕の中でやがて大きな輝きにかわって



 形を成す。





 細く綺麗な指先から



 すらりと伸びた手足



 絡まることを知らない真っ白な長い髪まで





 それはもう、天界から降り立った天使と見間違えるほどに美しく、女神の様に端麗で。





 シェイラは呆然と腕の中の彼女を見つめた。



 見間違えではないかと



 自分が望むあまり見てしまった幻想ではないかと、思った。



 ゆっくりと、固く閉ざされた瞼が開かれ、



 真っ白な睫毛に縁どられたそこから、宝石のような金色の瞳が顔を出す。



 何も考えることができない。



 声も出ない。



 ただただ見つめるだけ。



 次第にシェイラの腕に重みがかかり、体温を感じる。



 それは『生』の証。



 シェイラが求めたもの。



 求め続けたものだ。







 手の中に集まった光の中から現れたのは



 死んだはずの、ルミアだった。








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