掌ほどの想い出
 娘の声に急かされるように車を降りると、目に染み入るような新緑と共に、初夏とは少し言い難い冷ややかな突風が、私にきつく当たってきた。まるで、私の逡巡を苛むように。

――わかってます。私には、今のこの場所が一番です。

「うっわぁ、やっぱきれいだなぁ」
「うんっ! すごいねー、ママ?」
 夫と娘に向かって、にこやかに頷きつつも。
 でも私には。
 この先、どんなに見事な情景を見る事があっても、きっと、あの時の、あの一瞬の掌ほどの小さな薄青に、勝る物はないのかな、と思いつつ、目の前の風景をぼんやりと見つめていた。
< 6 / 6 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:2

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

かんしゃ の きもち

総文字数/12,530

恋愛(その他)43ページ

表紙を見る
主任、それは ハンソク です!

総文字数/80,244

恋愛(オフィスラブ)206ページ

表紙を見る
限定なひと

総文字数/47,114

恋愛(オフィスラブ)88ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop