ラグタイム
武人があたしを心配して言っているのはわかった。

でも、ちょっと過保護じゃないか?

「あー、うん…」

口に出すことができなくて、あたしは首を縦に振ってうなずいた。

「武人、もうそれくらいにしろ」

藤本さんがあたしと武人の間に割って入った。

「だけど…」

「武人、お前はもう休憩に入れ。

後は俺から言っておくから」

武人の言葉をさえぎるように、藤本さんが言った。

「…わかりました」

武人は呟くように返事をすると、厨房から立ち去った。

彼の後ろ姿はどこか悲しそうだった。

「夕貴」

藤本さんが名前を呼んだのと同時に、あたしにケーキセットを持たせた。
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