ラグタイム
夕貴はこの場に俺しかいないことを確認すると、
「昨日、兄貴が閉店後に誰かと話をしていたって言ってたよな?」
と、俺に聞いた。

「んっ?

言ったけど、それがどうした?」

そう聞いた俺に、
「もしかしたら、その“誰か”が兄貴の駆け落ちの相手かも知れないんだ」

夕貴が言った。

「ええっ、どう言うことだ!?」

大きな声で聞き返した俺に、
「シーッ!」

夕貴が人差し指を自分の唇に当てた。

「ああ、すまなかった」

俺は謝った。

「だけど、駆け落ちってどう言うことなんだ?

朝貴は失踪したんじゃなかったのか?」

できるだけ声をひそめ、俺は夕貴に質問をした。
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