ラグタイム
この場の視線が兄貴に全て向けられた。

「――朝貴さん…」

ようやく顔をあげた静絵さんが、呟くように兄貴の名前を呼んだ。

「静絵は小さい頃からずっと、ずーっと寂しい思いをしてきたんですよ!?

子供の頃から跡継ぎのお兄さんばっかりかわいがられて、自分には声をかけてくれたこともない。

お兄さんにはいろいろな習い事をさせて予備校にまで行かせていたのに、自分はピアノと習字を習わせただけで後は何もしてくれなかった。

彼女が通っている学校だってそうだ。

おばあさんとお母さんが卒業生だったからと言う理由で入学させられた。

学校を卒業したら親子ほど年齢の離れた男と結婚をしないといけないって、人生を決めさせられた。

駆け落ちがバカなこととか何とか言ってるけど、静絵は寂しかったんだよ!

愛されたいって言って毎日泣いてたんだよ!」

声を荒げて怒鳴る兄貴に、静絵さんのおばあさんとお母さんは目をそらすようにうつむいた。
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