ラグタイム
「静絵…!

あなた、どうしてこんなバカなことをしたのよ!?」

静絵さんのお母さんが今にも泣きそうな声で静絵さんに言った。

「そうよ!

こんなどこの馬の骨ともわからない男と駆け落ちをして…!

こんなことが世間に知られたら、『黄瀬病院』は世間の笑い者よ…!」

静絵さんのおばあさんはハンカチを顔に当てると、わーっと泣き出した。

静絵さんはうつむいているだけで、何も答えようとしなかった。

ダンッ!

その音に視線を向けると、兄貴がテーブルをたたいていた。

テーブルをたたいた兄貴の顔は怒っていて…いつぞやの悪夢があたしの頭の中によみがえってきた。

「あなたたちは何にもわかっていない!」

兄貴が叫ぶように静絵さんのおばあさんとお母さんに言った。
< 290 / 340 >

この作品をシェア

pagetop