今夜、上司と恋します

*


―――――ここは佐久間さんの部屋。



仕事が終わってから、私は佐久間さんの部屋に招いて貰った。
想像していた通りの整理された部屋。


なんか、すっごく佐久間さんっぽい。



「……あまり綺麗ではないが」

「どこがですか」



これで綺麗じゃないとか。おかしいです。
それってさり気なく私へのプレッシャーです。


「適当に座ってくれ」


そう言いながら、佐久間さんはスーツを脱ぐ。
スルリとネクタイを外してる時に、私はふっと思い出した事を尋ねる。



「……そういえば、ネクタイ女の人に貰ったって言ってましたよね」

「ゴホッ、ゲホ。と、突然何を言い出す」



今日身につけているのはその時のネクタイではなかったけど、女の人から貰ったんだと思ったら少しだけヤキモチだ。



「……その時の俺の言葉を覚えてないのか?」

「え?」



佐久間さんの言葉?
えっと、なんて言ってたっけ。

―――――確か。



“え。それって女ですか?”

“性別的にはな”

“性別的って。モテ男は違いますね、本当に”



ああ、そうだ。性別的にはって言ってた。
なんつう言い方だって思ってたな。私。
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