今夜、上司と恋します


「噂をすれば」


私たちの前に現れたのは、颯爽と歩く永戸さんだった。



「まーちゃん!」


野々村さんがそう呼びかけると、ぴたりと立ち止まり永戸さんはこっちに近寄って来た。



「哲君!お疲れ!雑誌の取材はこれから?」

「うん、そうそう。これからだよー」

「哲君って本当に老若男女ウケいいよね。羨ましいわ」

「そんな事ないよ、まーちゃん人気には負けるって今話してたとこだし」

「え、何それ」


そう言うと、永戸さんはちらっとこっちに視線を寄越した。
だけど、その視線はすぐに逸らされて広瀬に話しかけていた。



「広瀬さんもまさか、そんな事言ってたんですか?」

「言ってた言ってた。永戸は人気だよなって」

「やだなあ、本当に」



会話に入る事が出来ないまま、どうしようと思ってると後ろから声がかかる。
< 28 / 245 >

この作品をシェア

pagetop