今夜、上司と恋します
「何。そんな方がいたのか。浮いた話一つ聞かないから、いないものだと決めつけていた。
それはすまなかった。娘には私から言っておこう」
「お付き合いしてるわけではないのですが、その方がいる限り他の方というわけにもいかなくて…すみません」
「堅いのう。佐久間さんは。この機会にどうだ?他の女と会ってみるのは。
もしかしたら気に入るかもしれんぞ」
「気持ちはとても嬉しいのですが、私が惚れ込んでいまして…」
「そんな言葉が佐久間さんから聞けるとは。愉快だな。
慕われてるその人が羨ましい限りだ。今度はその話を詳しく聞かせて貰おうかな」
「あはは。三国さん、勘弁して下さい」
和やかなムードの中、私達は見送られて会社を後にした。
車に戻るまでの間。
ずっと頭の中を支配してたのは、佐久間さんの言葉。
心に決めた女性って、誰の事だろうか。
もしかして、永戸さん?
それとも、ああいう時の断る常套句だったのだろうか。
「次は店頭に行くぞ」
「はい」
そう返事しながらも、私の考える事は佐久間さんの好きな人についてだった。