ウ・テ・ル・ス
そんな焦燥感を募らせていても、現実はどうにもならない。とにかく今日は表参道のウィンドーショッピングを楽しもうと、ミナミは気持ちを切り替えた。見ると、街路樹から差し込む木漏れ陽のシャワーを浴びながら、長身のイケメンがこちらに向って歩いてくる。モデルのように長い手足に均整のとれた体躯。それに高級なスーツをセンス良く崩して着こなして歩く姿は、まさにファッション誌から抜け出てきたかのようだ。
しかし、あまりにも完全な人間は、得てして自分以外のものを愛せないものだ、そのクールな眼差しで相当な女を泣かせているはずだとミナミは勝手に想像した。ボーイフレンドとしては自分の手に余るが、連れまわる便利な兄としては最高だ。金持ちそうだし、あんな兄の腕にぶら下がり無邪気に買い物ができたら、皆から羨望の眼差しを向けられて、きっと強烈な優越感に浸れるに違いない。
妄想上の兄が、ミナミに何の関心も示さず横を通り過ぎていく。すれ違う瞬間、間近に妄想上の兄の顔を見たミナミはハッとする。見たことのある顔だ。そうだ、あの人が家を訪れた夜に、いきなりお姉ちゃんが家を出ると言い出した。ミナミのモードが、ウィンドーショッピングを楽しむ少女から、容疑者を追う女刑事に切り替わった。
「待たせて悪かった。」
秋良は、三室が待つテーブルに腰掛けた。そこはちょっと歩道に突き出た開放感のある席で、秋良のお気に入りの席だ。長い付き合いで三室もこの社長の性格も好みも、熟知しているのだ。彼の着席にあわせて、およそこの高級なカフェに似つかわしくない少女が背を向けて横の席に座った。一瞬秋良の目を引いたが、そんなことに構っていられない。さっそく自分達のかかえる大きな問題について話し始めた。
「彼女はどうしてます。」
「ストーカーに狙われたり、いきなり告示されたり…。混乱するのも無理はない。ゆうべはしばらく泣いていたが、やがて寝ついて、今はまだ俺のベッドで寝ているはずだ。」
「宅配便の姉ちゃんだった彼女が、ストーカーに狙われるほどの女になるとはね…。」
彼らの横の席の少女がピクリと反応した。
「それでどうします?」
「誰か面倒を見てくれる奴はいないか?」
秋良はすがるように三室を見た。
しかし、あまりにも完全な人間は、得てして自分以外のものを愛せないものだ、そのクールな眼差しで相当な女を泣かせているはずだとミナミは勝手に想像した。ボーイフレンドとしては自分の手に余るが、連れまわる便利な兄としては最高だ。金持ちそうだし、あんな兄の腕にぶら下がり無邪気に買い物ができたら、皆から羨望の眼差しを向けられて、きっと強烈な優越感に浸れるに違いない。
妄想上の兄が、ミナミに何の関心も示さず横を通り過ぎていく。すれ違う瞬間、間近に妄想上の兄の顔を見たミナミはハッとする。見たことのある顔だ。そうだ、あの人が家を訪れた夜に、いきなりお姉ちゃんが家を出ると言い出した。ミナミのモードが、ウィンドーショッピングを楽しむ少女から、容疑者を追う女刑事に切り替わった。
「待たせて悪かった。」
秋良は、三室が待つテーブルに腰掛けた。そこはちょっと歩道に突き出た開放感のある席で、秋良のお気に入りの席だ。長い付き合いで三室もこの社長の性格も好みも、熟知しているのだ。彼の着席にあわせて、およそこの高級なカフェに似つかわしくない少女が背を向けて横の席に座った。一瞬秋良の目を引いたが、そんなことに構っていられない。さっそく自分達のかかえる大きな問題について話し始めた。
「彼女はどうしてます。」
「ストーカーに狙われたり、いきなり告示されたり…。混乱するのも無理はない。ゆうべはしばらく泣いていたが、やがて寝ついて、今はまだ俺のベッドで寝ているはずだ。」
「宅配便の姉ちゃんだった彼女が、ストーカーに狙われるほどの女になるとはね…。」
彼らの横の席の少女がピクリと反応した。
「それでどうします?」
「誰か面倒を見てくれる奴はいないか?」
秋良はすがるように三室を見た。