凪の海
「野菜はまだ早いんじゃ…。先輩、何思いつめた顔してるんですか。大丈夫ですか?」
佑樹は無言で野菜を放り込む汀怜奈の奇行を心配顔で見守った。
「おい、ちょっと待て佑樹、いま先輩が投げ入れたその白くて丸い物体はなんだ。」
父親が野菜の中に混じって割下に浮かぶマッシュルームを箸で差しながら言った。どうやら父親は、汀怜奈の奇行よりも、これから入れる高級牛肉の味に悪影響を及ぼしかねない白い物体の方が、心配で仕方ないようだった。
ミチエが泰滋とのデートから帰って、明日彼がやってくることを告げると、母が大騒ぎをはじめた。何も天皇陛下が来るわけではないと、いくらミチエが言っても、母は耳を貸さない。晩御飯もそこそこ、部屋の大掃除、茶菓子の準備、客用座布団の虫干しをしなければと騒ぐ母に、長兄は友達のところへ行くと言って早々に家を抜け出し、妹はそそくさと勉強部屋に引っ込んでしまった。結局、母の指示でミチエだけが大汗をかいてその準備をする羽目になった。
夜遅くまで玄関の拭き掃除をしながらミチエは、なんで自分がこんな目にあわなければならないのかと、すこし泰滋を恨みたくなる。
それでも、彼が来てどんなことになるのかと余計な心配をする余裕がないということは、彼女にとってはよかったのかもしれない。実際、母が指示をしたすべてのことを終えて、深夜に布団に入ると、ミチエは疲れきっていて、まぶたを閉じた瞬間に眠りの園に入っていた。
翌朝、ミチエは日課である朝ご飯のお米研ぎのために、寝ぼけまなこをこすりながら庭先の水場に出た。朝の冷たい水に手肌をさらしていると、ミチエも徐々に目が覚めてくる。そこで、はたと今日の泰滋の来訪のことが心配になってきた。
『泰滋さんは、何時に来るかな?聞くの忘れちゃったわ…。』
『たぶん昼過ぎよね。海の幸が食べたいなんて言ってたけど、常識的には夕飯だろうから、昼食の時間を避けるのがマナーだもの…。』
『でも…昼過ぎに来て夕御飯まで何したらいいのかしら…。じっと家にいるのも嫌だし…。』
『だいたい、泰滋さんは、ここに何しに来るのかしら?本当に、海の幸を食べたいだけなのかしら…。それじゃただの図々しい貧乏学生だわ…。』
「ミチエさん…。」
『ビーフシチュー好きの貧乏学生なんて…傑作よね。』
「ミチエさん…。」
「きゃっ。」
佑樹は無言で野菜を放り込む汀怜奈の奇行を心配顔で見守った。
「おい、ちょっと待て佑樹、いま先輩が投げ入れたその白くて丸い物体はなんだ。」
父親が野菜の中に混じって割下に浮かぶマッシュルームを箸で差しながら言った。どうやら父親は、汀怜奈の奇行よりも、これから入れる高級牛肉の味に悪影響を及ぼしかねない白い物体の方が、心配で仕方ないようだった。
ミチエが泰滋とのデートから帰って、明日彼がやってくることを告げると、母が大騒ぎをはじめた。何も天皇陛下が来るわけではないと、いくらミチエが言っても、母は耳を貸さない。晩御飯もそこそこ、部屋の大掃除、茶菓子の準備、客用座布団の虫干しをしなければと騒ぐ母に、長兄は友達のところへ行くと言って早々に家を抜け出し、妹はそそくさと勉強部屋に引っ込んでしまった。結局、母の指示でミチエだけが大汗をかいてその準備をする羽目になった。
夜遅くまで玄関の拭き掃除をしながらミチエは、なんで自分がこんな目にあわなければならないのかと、すこし泰滋を恨みたくなる。
それでも、彼が来てどんなことになるのかと余計な心配をする余裕がないということは、彼女にとってはよかったのかもしれない。実際、母が指示をしたすべてのことを終えて、深夜に布団に入ると、ミチエは疲れきっていて、まぶたを閉じた瞬間に眠りの園に入っていた。
翌朝、ミチエは日課である朝ご飯のお米研ぎのために、寝ぼけまなこをこすりながら庭先の水場に出た。朝の冷たい水に手肌をさらしていると、ミチエも徐々に目が覚めてくる。そこで、はたと今日の泰滋の来訪のことが心配になってきた。
『泰滋さんは、何時に来るかな?聞くの忘れちゃったわ…。』
『たぶん昼過ぎよね。海の幸が食べたいなんて言ってたけど、常識的には夕飯だろうから、昼食の時間を避けるのがマナーだもの…。』
『でも…昼過ぎに来て夕御飯まで何したらいいのかしら…。じっと家にいるのも嫌だし…。』
『だいたい、泰滋さんは、ここに何しに来るのかしら?本当に、海の幸を食べたいだけなのかしら…。それじゃただの図々しい貧乏学生だわ…。』
「ミチエさん…。」
『ビーフシチュー好きの貧乏学生なんて…傑作よね。』
「ミチエさん…。」
「きゃっ。」