黒王子は不器用な騎士様!?
ザワつく教室。
背後に感じる黒々しいほどの威圧感。
後ろを向くのが怖くて、目の前にいる明日香を見れば、明日香は何か信じられないものでも見たかのように目を見開いて固まっていた。
ああ、最悪だ。
そう思った瞬間、グイッと強い力で肩を掴まれた。
「ッ」
『もっかい、俺の目を見て言ってみろよ。』
強引に顔を振り向かされて、視界に映ったのは、怒りの色を濃くさせて私を見下げている上から目線男――もとい、黒王子。
何で、何でコイツがここにいるんだ。
普段の私なら、こういう時、クラス間違ってますよくらいは、にこやかに言えたはず。
でも、この氷点下マイナスのオーラを身に纏っている彼に、そんなことを言えるはずもなく、息を詰まらせただけだった。
いくら剣道でしごかれた精神を持つ私でも、本人の前で"何で私があんな上から目線男を好きになるのよ!"なんてことは言えない。