黒王子は不器用な騎士様!?
――いや、不可抗力でもう言っちゃってるわけだけど。
『はぁ…ホント、ムカつくわ。』
「っ」
重々しい溜め息を吐かれた。
確かに、自分の悪口を堂々と言われて笑顔でいられる人なんていない。
さっきまでイキっていたはずなのに、今はなぜかすごくここから逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
――罪悪感で、心が押しつぶされそうだ。
『顔、貸せよ。――石川 遥。』
「え……ッ」
低い声に乗せられた自分の名前に驚く。
どうして私の名前を知っているのか、そんな疑問を口に出せる暇もなく、強い力で腕を掴まれた私は、黒王子が教室に現れたことで騒がしくなっている教室から連れ出された。
「ちょっと、どこに――っ」
『黙れ。』
反論することも許さずに、黒王子の登場にキャアキャア言っている女子を掻き分けながら、彼は廊下をズンズンと歩いていく。