黒王子は不器用な騎士様!?
剣道部に…入部?私が?
ちょ、ちょっと待って。
先輩って、黒王子の彼女さんじゃ――…
『2週間前のクラスマッチで、貴女の試合見たの!あの間合い、あの剣裁き…!間違いなく、剣道経験者よね!?しかも初段以上の持ち主!貴女はきっと、これからウチの主将を張れるくらいの――ッ』
「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ、先輩!」
大きな瞳に血の気を迸らせて、鼻息を荒くしてこちらに迫ってくる先輩を、肩を掴んで止めさせる。
先輩が黒王子の彼女さんじゃないことは、充分分かった。
確かに、私は2週間前に行われたクラスマッチには剣道の試合に出た。
他にバレーとかバスケもあったけど、剣道が一番人気がなくて、誰もやりたがらなくて体育委員が困っていたから、仕方なく、私が出ることにしたんだ。
でも、たかが高校のクラスマッチで私が本気になるわけにもいかず、大分手を抜いて試合したんだけど――…どうやら、この先輩には見抜かれていたらしい。
…決勝戦で、さすがに優勝するのはマズいとわざと負けたんだけどな。
『ご、ごめんなさい、私…っ、つい熱くなっちゃって…!』
「い、いえ…。」
我に返った先輩は、羞恥心からか頬を赤く染めた。
少々熱くなりすぎですけどね、と思いながらも口には出さず、私は苦笑いを浮かべる。
まさか……先輩の呼び出しが部の勧誘だなんて。
あと1ヶ月半で1学期も終わりだというのに、何で今頃…という気持ちでいっぱいだった。