【反省は】玉の輿なのにやらかした件。【していない。】
「……」

 私達はいつまでも抱き合ったまま、呆然と朱雀の朱色に染まっていく姿をただ見つめていた。
 やがて、朱雀の全身が朱色に染まりきった瞬間、彼は一瞬にして大きな鳥の姿になり、空に向かって舞い上がっていった。

 群青色の夜空が広がっているはずの空は、突然金色に輝き、きらきらとまたたいて、朱雀の帰還を祝っているようだった。



 また、井戸の中に薄暗い闇が戻ってきた。
 おうい、おうい、と消防団の人が私達を探す声がどこからか聞こえてくる。
 私は景久さんに抱きしめられたまま、かすれた声で小さく尋ねた。


「景久さん……私がここにいるってこと、どうして……わかったんですか」

「あなたが逃げたときのために、あなたの携帯にGPSアプリを仕込んでおいたんですよ。意外なところで役に立ちましたね」

 この人は……。
 呆れてものも言えなかった。





 私はその後、消防団の人たちに助け出され、二ヶ月近く北条病院に入院した。
 私が入院している間に、桜子さんの心臓移植手術が行われ、彼女の手術は成功した。

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