三十路バンドギャルの憧憬邪心LOVE Grail
いくらいい男が現れても金がなきゃ愛も冷めちまうさ。

平均点の男と結婚したとして、男の年収がよくて五百万と仮定し、私のパート代、仮にスーパーのレジ打ちとして、二人合わせても六百万前後の世帯年収。


それで子供ができればどうだ、しかも二人できればどうだ、貯金なんて殆どできないし、その日の生活だけで精も根も尽き果てる。


下流家庭でその日暮らしなんて、あたしゃイヤだね。

年金もいただけるかわからず、老い耄れになってからの金もないとくれば尚更。

なのに、なのに、周りの男や女はホイホイと結婚していきやがった。

聞けば夫の年収はたったの三百万ときたもんだ。

老後の安泰も贅沢も捨てるのか、どうやってこの世界をサヴァイヴしていくのかと小首を傾げたくなるね。

結婚に踏み切る神経がわからないわ。高水準且つ安定した生活以外に幸せなんてないね。


それなのに、それなのに……。

何だこの悔しさは!

年収三百万以下でもいいからとにかく男が欲しくなる我が女心よ。

かつてニートやフリーターの男と付き合って懲りたはずなのに。

愛と金、どちらも欠けてはならないのだと。

なのに、なのにだ!


「いっそホームレスでもいいから、ちょー彼氏ほしいんですけど!」


両腕を広げ宝塚歌劇風に叫ぶのだ。
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