死神のお仕事


「そろそろ来る頃なんだけど…次の電車かな」


アラタさんの呟きに、同じように私も改札の方へと顔を向けた。来る頃という事は、誰かを待っているという事なのだろうか。電車に乗って来るという事は、待っているのは人間?でもアラタさんの姿は見えないはず…なんだよね?あれ?


何か可笑しいなと、声に出さずに疑問に思っているその数分後、次の電車が到着したようで、改札の向こうから出て来る人が現れ始める。


「あ、来た」


声のトーンを上げてアラタさんが目で追う先。その人の波に乗って現れたのは、制服姿の女子高生だった。


「彼女だよ」


愛おしそうに、アラタさんはうっとりとした視線を送る。


「彼女が、僕の生きる意味」


その瞳の先には、彼女しか存在していなかった。帰宅する所なのだろうか、背筋をスッと伸ばして颯爽と歩いて行くその子だけを映した瞳で、アラタさんはそう告げた。

その瞳の奥にはやっぱり、あの時と同じように潜む何かが表に溢れ出していた。

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