死神のお仕事
契約書にサインをして、私はサエキさんの部下になったと言われた。部下というのは別の何かを分かりやすく言い換えた言葉だったのかもしれない。だとしたらこの契約書、あの時のものと同じものなんじゃないのかな。
私の魂についての契約書、という事なのでは。絶対に破れない、目に見える約束。内容を目だけで良く読み込む。魂の交換、その後の補償、そんな文で合ってるはず。キリヤさんの言葉以外のものは特に見当たらない。
「契約書で嘘は付けません。そういう決まりです。心が決まりましたら、署名を」
渡された金属のペンがやけに重たく感じた。でも、やるしかない。私の責任は今、私にある。目的の為にはリスクを背負わなければならない。
サラサラっと、私はそこに名前を書いた。『田中 あかり』という文字がスーッと染み込んでいき、真っ白の用紙の色を真っ黒に染め上げていく。これは以前と同じ光景。同じ状況。
「ふふっ、ふふふ」
契約書を手に取ると、キリヤさんは笑った。片手で口を押さえ、込み上げる笑みを抑え込むようにしながら、指の隙間から溢れる笑い声が不気味で、急にとてつもない不安が襲う。
もしかして私、何か取返しのつかない事をしてしまった…?