死神のお仕事

「あぁ。だってそうだろ？それってつまりおまえはもう人間でも死神でも無いって事だもんな」

「……え？」


人間でも、死神でも無い？


思いもよらない言葉に、一瞬思考が停止する。でもそんな私に彼は意地悪をする訳でも無く、その言葉の意味をちゃんと説明してくれた。


「どっちでもあるって事は、どっちでも無いって事。中途半端は結局どっちにも入れなくて、自分自身どっちが本当の居場所なのか分からなくなる時がきっと来る」

「……」

「だからこっちに来いって言ったんだ、おまえをこっちにやったのは俺だから。割り切った方が自分を見失わずに済むだろうからな。でもおまえはそっちを捨てなかった」

「…はい…捨てられ、ないんです」


…なんだか、悪い事をして怒られてるような気持ちだった。間違ってる事をしてしまった、というか…

…彼の好意を無駄にした申し訳無さがそうさせてるのか、正直そこまで考え及んでなかった自分の浅はかさにそうなったのかーーすると死神さんはそんな私に気づいたんだろうと思う。キョトンとした表情を浮かべると、


「別に良いんじゃねぇの？それで。おまえの人生なんだから決めたんならそれで貫き通せよ、何も悪くも間違いもねぇだろ」


なんて言葉を、さも当然の事のように私に言ってくれた。私が決めたんだから何も間違っていない…その言葉がまるであの時みたいに私の背中を押してくれたように感じて…私は重くなった心がすっと軽くなったような、そんな気がした。