死神のお仕事


「…死神さん…」

「あとそれ、死神さんってやつ。それおまえ人間さんって呼んでんのと一緒だからな?」

「え?あ、えっと…そっか、そうですね。そしたらえっと…」

「サエキ」

「サエキ?」

「俺の名前」

「あ、サエキさん…えっと、私は田中 あかりです」

「あぁ。よろしくな、あかり」

「こ、こちらこそ…サエキさん」


まぁ頑張れよーーなんて言われてその日、ようやく私は長かった一日を終えた。

なんだか失礼だし意地悪だし上目線の死神さんーーサエキさんだったけど、なんだか優し…くはなさそうではあるけれど、頼りになりそうな、そんな感じがした。だから明日からの新しい生活は不安ではあるけど心配ではない、そんな私がいる。


死神の私に、人間の私。

そんな私が生きる世界。

今までの環境とガラリと変わってしまったけど、でも実際私は私。お母さんに命を救われて、それからはツイてない毎日を送ってきたただの私。

私が私として生きればきっと大丈夫。これからも精一杯真っ直に生きていこう、サエキさんの元で死神としても、人間としても…なんて、あっちとこっちの境界線に立つ私は今日、心に決めた。


決めたのだ。





< 46 / 265 >

この作品をシェア

pagetop