死神のお仕事


ガラリと、躊躇なんて無い動きで開かれた障子戸ーームハッと溢れ出す濃い香り。


「うっ…」


思わず目に入ったそれから目を逸らした瞬間、


「逸らすな」


強い言葉が、私の視線をそこへ引き止めた。サエキさんが言ったのだ、自分も真っ直ぐにそこから目を逸らす事無く、後ろに佇む私に向かって。そしてーー


「ちゃんと見ろ。おまえにはどう見える?」


宙で上下に浮き沈みを繰り返していたそれを手に取り、私の目の前に差し出した。


ドクン、ドクンーー鼓動が聞こえる。


「…こ、これが…魂…?」


声が、自然と震えてしまった。口に出した問いの答えは…もう分かっている。分かっているけど…受け入れられない。

受け入れたくない。だってこれを、私はこれをーー…



“グロテスク”


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