死神のお仕事
…まず初めに浮かんだのはその言葉。それはーー魂はまるで、人間の心臓のように見えた。
ドクドクと脈打つ真っ赤な塊がテカテカと光っている。何本も浮き出る筋はさながら血液を運んでいる血管のよう。
信じられない事に、これが宙をフラフラと浮かんでいた。
重そうな質量を感じさせ、重力にだって逆らえる訳なんて無いその姿なのに、まるで存在をこちらに示すように不安定に浮かんで見せて、ムハッとした香りを纏わり付かせてくる…
…力強さに、執着心。欲。
感情がある訳ではないだろうけど、見せられた訳でも無いのだけれど、私にはそれらが感じられた。それらの塊、それが魂。それが、命。
…命。
そうだ、これは命の元だ。
生きる為の心臓だ。
それを私はーー
「あぁ。食べろ」
ーーこれから食べる、なんて…
彼の手の中で大きく生々しく存在を主張するそれを、一体誰が食べられるというのだろう。
無理だ。
私には…人間には、無理だ。