小春日和
春、雪が舞う頃に
〜春side〜




社会には目に見えない決まりが沢山あるように、学校にも目に見えない決まりが沢山ある。


この世界には価値観で決められた「常識」があって、それを破ると異端者として扱われる。


私の身近で言うとイジメ。


ただ、常識を破るとそうなるだけで、ようは破らなければ世界は優しく平和なものなのだ。


私は、恋をしてはいけない。


それが私が「常識」から外れない為の唯一の手段。


冷たくて優しい世界に閉じこもることしかできないで、この先ずっと変われない。


桜が道路に色を付け始めると、世界の色も又同様に色を変える。


心情の変化や環境の変化によってそう見えるだけだけれど、私はそれが怖い。


新しい制服を身に纏って、乗り慣れない電車に乗る。


向かい側には幼馴染みの湊(みなと)がケータイを眺めながら百面相をしていた。


湊と仲が良かったのは小学校までで、中学入学後に私は彼に避けられるようになった。


男女の友情なんて成立しないと思ったのは、その時が初めてだった。


彼との関わりが無ければ私は異性との接点が全くなくなり、ある一件に拍車をかけられて私は男性恐怖症になった。


目の前に座っている彼が時折気にするようにこちらに目を配らせるのは、私の異変にすぐ気付けるようにだろう。


優しいのは変わらないのに、この明確に出来ている距離の意味は謎のままだ。


最寄り駅から3駅、そこから自転車で20分。


徒歩5分で着けた中学校とは大違いだと思い、改札で定期券を見せながらようやく高校生という自覚が生まれてきた。


人が多い時間帯に駅を利用したのは人生で初めての経験で、何人かの人にぶつかったが誰も気にも止めていない様子なのが不気味だった。


ようやく駐輪場へ行き、自転車に跨ってペダルをこいだ。


全身に浴びる風が心地よくて、それが私の不安を吹き飛ばしてくれる気がした。


信号まで行くと、私と同じセーラー服を着た人を何人か見るようになった。


ステッカーが貼られていない自転車なのでおそらく同級生だが、私はペダルに乗せた自分の足をジッと見つめて知らないふりをした。


声をかける勇気などないし、そんなことをして失敗するのが恐ろしいからだ。


自分で言うのも何だけど、こんな性格だから友達が極端に少ないのだろう。


溜息を風が連れ去っていく。


風に慰められている気がして、思わず笑ってしまった。


家がある街より、この街の風が暖かく感じた。


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