君の声が聞きたい

ぐるぐると考えている内に、いつの間にか寝ていたらしい。
父さんに夕食に呼ばれて起きた。
父さんと母さんは離婚した。
俺が中学2年の頃に。
それからは父さんと2人暮らし。


「…どうした?何かあったか?」


父さんが顔を覗き込ませてきた。
機嫌を窺うような、そんな視線。
母さんと離婚してから、いつもこんな感じだ。
子供の顔色窺って、機嫌をとる。


「別に…。」


曖昧な言葉で誤魔化して、ヘッドホンの音量を上げた。
父さんがこんなんで、家の空気もどこか濁っているから家でもヘッドホンが手放せない。
逃げだってのは分かってるんだけど。


「そ、そうか…。」


気弱そうな父さんの声が聞こえた気がした。
俺は顔も上げず、そのまま黙々と夕食を食べた。
< 30 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop