俺様常務の甘い策略
「往生際が悪いよ」

藤堂にギロッと睨まれて、渋々私は住所を伝えた。

「……中野坂上よ」

それから、藤堂が車を発進させ、四十五分くらい車に乗っているとアパートの前に到着。

築三十五年の二階建ての古い木造アパート。

今にも壊れそうなこのアパートを見て、藤堂が信じられないと言った様子で目を見張る。

「ほんとにここなの?」

「そうよ。あんたの高級マンションに比べればそりゃあ古いけど、家賃は格安だしレトロな感じで良いでしょう?」

「レトロじゃなくて、これはボロいって言うんだよ。うちの給料そんなに安くないはずだけど……。ああ、そうか。そのブランドのスーツ買うために住居費けちってるの?」

私に向けられる藤堂の冷ややかな視線。

チッ、鋭い奴だな。心の中でそっと舌打ちする。

「それは……」

言い訳を考えていると、藤堂は刺々しい口調で言った。
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