俺様常務の甘い策略
だが、逆に俺にとっては好都合だった。

ショックで判断力の鈍った秋月を上手く言いくるめて俺の家に来させる事になったのだから。

炊飯器が自宅にないという秋月の話から、彼女の家事能力にはあまり期待していない。

この機会に料理を教えてやるのも楽しいかもしれない。

想像すると会議中にもかかわらず、口元がほころぶ。

二時間の長い会議が終わり席から立ち上がると、社長であるじいさんがニヤニヤしながら意味ありげな視線を俺に向けてくる。

「何ですか?」

冷ややかな目で聞けば、じいさんの目が悪戯っぽく輝く。

「お前、会議中ずっと沙羅くんの事考えてただろ?顔がニヤニヤしてたよ」

「ニヤニヤしてるのは社長の方でしょう?鏡を見たらどうですか?」

澄まし顔で俺は話を逸らす。

「お前、そう言って話を誤魔化す気だろう?昨日はちゃんと沙羅くんを自宅まで送ったのか?」

しつこいじいさんだな。正直言ってうっとおしい。
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