俺様常務の甘い策略
彼女が腕を振り上げて俺の胸板を叩こうとしたので、すかさず彼女の腕を掴んだ。

「残念ながら、うちの家系にハゲはいないんだよね」

俺の言葉に秋月が悔しそうに歯軋りする。

「だったら、ハゲるように毎日神に祈ってあげるわよ!」

「そんな暇があったら、早く自分の結婚相手見つけたら?」

秋月の痛いところをついて彼女の腕を離すと、彼女は俺に噛みつくように叫んだ。

「煩い!あんたには関係ないわよ!」

「そう言ってられるのも今のうち」

秋月に聞こえないように小声で呟く。

「は?なんか言った?」

「いいや、何でもない。部屋の片付けと、資料頼んだよ」

クスクス声を出して笑いながら、後ろ手を振って部屋を出る。

秋月がまだ何やら俺の悪態をついているようだが、もうよく聞こえない。

懐かしい日常が戻ってきた。

秋月には悪いが、彼女をからかうのは楽しい。

今まではずっと張りつめた緊張の中にいたのに、彼女といると自然と身体が解れ、その存在に癒される。
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