俺様常務の甘い策略
「ちょっと……」

私は一緒に行くなんて言ってないんだけど……。

そう言い返そうとしたが止めた。

今日の私はおかしい。

きっと仕事し過ぎてお腹空いてるからよ。

そう、空腹だからおかしいんだ。

「藤堂の奢りなら、近江牛のしゃぶしゃぶ」

藤堂の奢りなら遠慮なんてするもんか。

ムスッとしながら答えたのに、藤堂はそんな私を見て面白そうに笑った。

「了解。店の指定じゃなくて、肉のブランド指定なんて秋月らしいね」

「文句があるなら米沢牛でも良いわよ」

気を取り直して挑戦的な目で藤堂を見ると、こいつは目を細めながら私を見て笑った。

「文句はないよ。さっき、社長室でちらっとメール見たけど、秋月に頼んだ資料よく出来てたしね。秋月に頼んで良かった」

「当然よ」

私は藤堂に向かって勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

今日、一番聞きたかった言葉かもしれない。

自分の仕事を認めてもらえるのは、自分自身を認めてもらえるようで嬉しい。
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