俺様常務の甘い策略
「秋月、顔、耳まで真っ赤だよ」

何でいつもそんなに余裕な顔でいられるのよ!

「う、煩い!ちょっと、脚立から落ちて驚いただけよ!」

藤堂から顔を背け立ち上がろうとすると、彼に左手を捕まれる。

「落ち着いて。転ぶよ」

「落ち着いてるわよ!」

藤堂の手を振り払って急いで立ち上がると、勢いがありすぎたのかよろけた。

「ほらほら、慌て過ぎ」

すぐに起き上がった藤堂に支えられ、彼とまた目が合う。

藤堂の目は笑っていた。

ああ~、もう悔しい‼

結局、藤堂に支えられたまま一緒に立ち上がる。

心臓の音がこいつにも聞こえそうなくらいバクバクいっている。

この心臓、どうにかならないの?

落ち着いて、落ち着いて。私らしくない。動揺し過ぎよ。

ちょっと気まずくて黙っていると、藤堂がそんな私の心中を知ってか知らずか話題を変えた。

「早く仕事終わらせて、飯食べに行くよ。何食べたい?」
< 65 / 299 >

この作品をシェア

pagetop